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帽子をかぶる勇気

帽子は照れくさい。そのクラシックな佇まいが、どこか芝居がかった気がして気恥ずかしい。いきなり帽子をかぶると、まわりから変だと思われるのではないか、と思うのは自然だ。しかし、心配する必要はない。帽子と親しくなるには、まず慣れることがいちばんだ。帽子店で見立ててもらったソフト帽を、デビューさせる前に必ず、自宅でかぶってみる。どんなかぶり方が手慣れた感じがするのか、研究するのだ。鏡を前にしばらく試してみたら、その日はそれで終了。これを毎日数分間だけ繰り返す。すると、いつのまにか自分の中で、帽子をかぶるのに飽きてくる。いい方が悪ければ、帽子が当たり前のものになっていくのだ。そうなればしめたもの。あとは外出するのみだ。帽子に限らず、日本人が一般的に苦手とされるアイテム、たとえばタキシードやポケットチーフや淡い色の靴などが、まるで借り物のように見られてしまうのは、ひとえにまだ自分のものにしていないうちに外へ出てしまうからである。家で何遍も、それこそ飽きるほど着脱を繰り返し、いい加減、飽きたころ、その装身具と仲よくなれる。なんであれ、最初から似合う人なんていないのだ。欧米の男性にタキシードが似合う人が多いのは、それだけ場数を踏んでいるからにすぎない。同じ欧米人でもタキシードを着たこともない人だったら、決して様になるはずもない。着こなすのは、衒いがなくなってから、はじめてできることなのである。

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